漢方薬とは違う?食養生に見る絶妙なバランス感覚

漢方と言えば誰でもすぐに思いつくのが漢方薬ですよね。よく知られているように、漢方薬には乾燥させた上で細かく刻んだ薬草を煮詰めて飲むタイプのものや、もっと服用しやすいエキスの顆粒や錠剤もあります。いずれもちょっと変わった匂いがするので、漢方といえばあの独特の匂いや薬の不味さを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。

でも漢方医学の治療方法は、この漢方薬だけではありません。逆に漢方薬は、鍼やマッサージ、運動療法、食事療法など様々な療法の中のひとつとして位置づけられています。医学といっても薬による治療だけに頼らず、生活の中で身体を元気にするための、いわば総合的な知恵の集大成が漢方医学だと言えるでしょう。「薬がないと話にならない」と考えてしまうのは、むしろ西洋医学の影響なんですね。

漢方薬が処方されるのは、ある程度症状が出てしまった場合ですが、それ以前の人ならば毎日の食事で、自然に体調をコントロールすることが可能ですよ。それが漢方の食養生というものです。少し体調が悪くなればすぐに薬や注射を求める方もいますが、それは西洋医学式の考え方で、長い目で見れば必ずしも正解とは言えない場合もあります。

一方で漢方の治療で特徴的なのは、悪い所だけを見るのではなく、全体としての身体を捉える点だと言えます。例えば薬や注射によってピンポイントで治療をしても、そのために他に負担がかかったり副作用が生じるというのでは、身体全体の治療としては失敗ということになってしまいます。食べることによって身体を整えることは時間がかかりますが、体全体としての治療なのですからそれも当然のことだと言えるでしょう。

食養生などというと、例えば糖尿病や高血圧の食事制限を思い浮かべてしまいますが、漢方の食養生は何か特定の病気の治療を目的にするものではありませんから、もっと緩やかでやりやすいものです。それには元となる独特の考え方があり、それが四気五味です。これは食材や食べ物の分類方法で、四気とは「寒、涼、温、熱」を指し、それぞれ身体に入った時に冷やしたり温めたりする作用のことを意味しています。

五味は味覚の「酸っぱい、甘い、塩辛い、苦い、辛い」を指しており、それぞれの味が対応する五臓を養うと考えられています。例えば辛いものは肺や大腸と、塩辛いものは腎臓や膀胱と関係しているとされているんですよ。身体を温めるとか冷やすといった考え方には多少馴染みがあっても、この五味のことは知らない方が多いのではないでしょうか。

食べ物の味が内臓と関わるなんて、なんだか妙な気もしますが、塩辛いものを食べ過ぎの人が腎臓を悪くするということは、現実にもあることですよね。中国医学は長年の経験知を元に練り上げられたものだけに、根拠となる事実の裏付けはちゃんとあるんですよ。このような分類に基づいて、漢方では身体全体のバランスを整えることが重要視されます。またこの五味をバランスよく摂ることは、食事の美味しさにも大きく関わっています。この五味の絶妙なバランスこそが、あの中国料理の美味しさに繋がっていると考えられています。